追悼 ソラフディン氏 – CSEAS Newsletter

追悼 ソラフディン氏

Newsletter No.83 2026-02-10

岡本 正明(地域研究、政治学)

本研究所で2023年に招へい研究員をしていたソラフディン氏が心臓発作で亡くなった。2025年12月25日夜から翌朝の間のことで、彼が執筆用に借りていたジャカルタのアパートの一室でのことであった。まだ55歳であった。イスラーム系の雑誌で記者を務めた後、「国際危機分析グループ(ICG、International Crisis Group)」のジャカルタ事務所でコンサルタントになり、ICGの後継組織である「紛争政策分析研究所(IPAC、Institute for Policy Analysis of Conflict)」では所長を務めていた。インドネシアの政治社会問題を知ろうと思えば、ICG、そしてIPACの報告書(無料)を読むとわかることが多く、多くの日本人研究者も頻繁に引用してきた。こうした報告書の多くを書き上げてきたのがソラフディン氏である。インドネシアのイスラーム系テロリストに着目して書き上げた『インドネシアにおけるテロリズムの起源』は、ソラフディン氏の情報収集力とネットワークの凄まじさを如実に物語る傑作で、インドネシアのイスラームを学ぶ人にとっては、研究者であれ政策担当者であれ、今でも必須文献である。

ソラフディン氏の場合、研究者として優れているだけでなく、人間力に溢れた人でもあった。こちらが知りたいことがあれば、すぐにWhatsAppで教えてくれるし、会いたい人がいるというと、その人にアクセスできるようにしてくれたりした。日本の若い研究者とも一緒に研究をすることを楽しんでいた。好奇心も旺盛で、外国人研究員として京都にいるとき、真夏の8月の三井寺で行われた「三井寺妖怪ナイト」に行かないかと声をかけたら、喜んでやってきてくれた。一緒にいてとても楽しい人だった。

ソラフディン氏が本研究所の招へい研究員だったのは、2023年7月1日から12月31日だった。『インドネシアにおけるテロリズムの起源』の続編を書こうと思いながら、ジャカルタにいるとIPACの仕事などで忙しくて時間が取れなかった。京都で落ち着いて書き上げたいというのが、ソラフディン氏が招へい研究員に申請した理由であった。京都に滞在中は、ほぼ毎日、執筆に取り組んでいた。半年の滞在中に7割ぐらい書き上がったと言って喜んでいた。受入教員として嬉しかったのは、ソラフディン氏が京都での生活を気に入ってくれたことである。自動車での生活が当たり前のジャカルタと違って徒歩中心のライフスタイルになり、健康的になり減量作戦も大成功した。よほど気に入ったのか、翌年には私費で一ヶ月ほど京都に滞在もした。

今年も京都に来るような話を聞いていたし、そろそろ続編も仕上がるだろうと期待していたときの訃報であった。まだまだ研究を続けることができたし、京都に来たら温泉に連れて行くはずだったのに本当に残念でならない。55歳は若すぎる。心よりご冥福をお祈りします。

ビジターズ・ボイス 
ソラフディン氏インタビュー「インドネシアにおけるISISの系譜を理解する」(2023年7月)

本記事は英語でもお読みいただけます。>>
“In Memory of Solahudin” by Masaaki Okamoto