高橋 知子  Tomoko Takahashi – CSEAS Newsletter

高橋 知子  Tomoko Takahashi

Newsletter No.81 2023-06-14

グローバル生存基盤研究部門・機関研究員
専門は政治学、国際関係論、国際制度論

2023年4月に着任いたしました、高橋知子と申します。国際関係論分野の中でも、私はマルチラテラル外交が展開される国際制度を専門としており、実証する地域としては中国と、その連合相手としてのグローバル・サウス諸国に注目しています。私は、国連総会における大国のパワーと規範・ルールづくりの関係について研究してきました。手法としては、データづくりとその統計分析、また国連文書や中国の公開文書を利用した事例分析を併せる手法を採っています。

私の研究の原点にあるのは、国家の合理的な計算や思惑があってもなお、どこまで国際制度における協力が可能であるのか、ということへの関心です。幼稚園から小学生の頃、私はベトナムの国連国際学校(UNIS)ハノイ校と、中国の北京国際学校(ISB)に通っていたことがあり、これらの経験は、今の国際協力への関心につながっています。またいわゆる「第三文化の子供」として育ったため、多様な文化が行き交う本研究所は、とてもアットホームに感じています。

私は、東京大学の法学部時代を通じて、自ら国際的な協力に携わりたいという思いと、ゼミへの参加で見つけた、時空を超えて多様な人と学問的に対話をしてみたいという気持ちの間で揺れていました。その後進学した東京大学大学院の総合文化研究科の修士課程、また訪問学生として訪れたジュネーブ国際・開発高等研究所にて、国際的な協力を観察対象として研究することに次第に落ち着きました。シカゴ大学において、国際関係論の二つ目の修士号を取得しましたが、東大の歴史学と中国研究の専門家とは対照的な、「理論−実証」型の政治学者に囲まれたことで、研究上のアイデンティティの模索もしました。総合文化研究科に戻り、先日博士論文の口頭試問を通過しましたが、その執筆の過程では、シカゴのスタイルで普遍的な理論・仮説を生成・実証するなかで、特殊だとされてきた中国やグローバル・サウスを取り上げることにチャレンジした次第です。

以上の経緯から、常に多様な分野・手法の専門家から学ぶことを大事にしたいと考えています。マルチラテラリズムの研究は、究極には、国際制度論者、各メンバー国の地域研究者、さらにイシューエリアの専門家(経済・安全保障・環境専門家等)の知見が求められると考えており、特に東南アジア地域研究研究所では、ASEAN諸国の専門家の方はもちろんのこと、理系の先生がたとも対話できることを楽しみにしています。着任後、早速多くの研究者と対話をさせていただいており、手法としても、データや文書の分析に加えて、インタビュー調査を積極的に進める所存です。

京都の素晴らしい環境にて、ポスドクを始めさせていただいておりますこと、深く感謝申し上げます。

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New Staff: Tomoko Takahashi