久納 源太 Genta Kuno – CSEAS Newsletter

久納 源太 Genta Kuno

Newsletter No.82 2024-04-10

政治経済共生研究部門・機関研究員
博士(地域研究、京都大学)
専門は地域研究、都市研究

日本学術振興会特別研究員(DC1)を経て、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科にて博士号を取得し、2023年12月に東南アジア地域研究所機関研究員として着任しました。現在、インドネシア都市部におけるセキュリティと社会統制の日常的実践をテーマに研究を行っています。

都市は多様な人やものが複雑に集まる場所です。また、その集積過程を直接的にあるいは間接的に管理しようとする営みであふれている場所でもあります。私は、人やものが管理し、管理されるさまざまなプロセスが絡み合うなかで、どのような空間形成のパターンが生み出され、ひとつの都市を作り出しているかに関心を持っています。また、インドネシアの都市をフィールドとする地域研究者として、過去数十年にわたる都市の拡大と急激なガバナンスの制度的・技術的変化を一貫して観察し、その影響を考察しながら研究を続けてきました。

ジャカルタでみられる路地バリア

私の研究関心の土台には、インドネシアの首都ジャカルタに8年以上暮らし、そこで遭遇したさまざまな不思議や疑問があります。たとえば、似たような屋台の売場であっても、ある場所ではならず者によって管理され、別の場所では自治体によって管理されているのはなぜなのか。また、警備員や監視カメラ、門扉などが設置され、住民以外の立ち入りが禁止あるいは制限されている住宅地が多い一方で、場所によっては、家族でもない住民同士が互いの住まいを行き来する光景が見られるのはなぜか。このような関心を出発点として、学部時代にインドネシア大学で犯罪学を専攻した経験もふまえ、大学院では、公道を門などの障害物(路地バリア)で封鎖するというジャカルタで頻繁に目にする行為に着目しました。そして、路地バリアが、交通整備から、防犯対策、感染予防まで、用途を多様化させながら都市の成長とともに都市全域に伝播した過程を分析しました。

私が調査で大切にしていることは、現象を全体において捉えることです。これは、インドネシアの都市を研究する際にしばしば直面する二次データの不足という問題を克服する際に役立っています。インターネット上の情報資源を活用し、散在する公文書を整理することはもちろん、ジャカルタの隅から隅まで足を運び、対象物やエピソードをマッピングすることなど、緻密な作業の積み重ねからデータを収集することに努めてきました。 最近は、フィールドをジャカルタ郊外に広げ、村落-都市社会の混住に特徴づけられる郊外化を、セキュリティと社会統制の実践の側面から再検討することに興味をもっています。具体的には、非属人化された都市的な社会関係を象徴する監視カメラのようなセキュリティ装置や、個人主義的な道徳観念の広まりを表す婚前同棲に寛容な住宅が、郊外地域でどのように浸透しているのかについて研究しようと考えています。今後、本研究所でこれらの研究をより広く、深めてゆきたいです。

地域のリーダーと談笑する私

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New Staff: Genta Kuno